2015年実績について
すがすがしい風の中にも初夏の香りを感じるこのごろですが、皆様如何お過ごしでしょうか?
さて、今回の通信は最新の当外来の実績をご報告いたします。H27年(1月~12月)に当外来で妊娠された方は393名いらっしゃいました。
図1はH27年に当外来でどのような治療を受けて妊娠されたのかをまとめたものです。約30%の方が排卵誘発やタイミング法で妊娠されています。また、AIH(人工授精)の妊娠は22.6%で、ART(体外受精、顕微授精、凍結胚移植)による妊娠は44.3%で年々高率になっています。(5年前は3割くらいでした。)
不妊治療は原則自然妊娠をめざし、タイミング法から開始致しますが、患者様の高齢化や、体外受精に対する認知度があがり安全性が確立されつつあることによって体外受精による妊娠が増えてきていると思われます。しかし、50%以上の方が体外受精をしなくても妊娠できているので、まずは自然妊娠を目指しましょう。
☆AIH(人工授精)について
AIH(人工授精)は毎月できて比較的自然に近い妊娠であり、簡便で副作用の少ない治療です。不妊原因不明の方、軽度精子に異常がある方が適応となります。実際、排卵に近い時間で行いますが排卵の前でも後でも妊娠は可能です。(直後がベストだと考えています。)妊娠率は図2のように40歳を過ぎると、39歳までの方に比べ約3分の1に低下しています。さらに詳しく、過去9年間の統計を見ても同じような傾向にあります(図3)。ほとんどの妊娠は5回目までに発生しますので4~5回人工授精を行って妊娠しない場合は、ステップアップが必要となります。
☆ART(体外受精、顕微授精、凍結胚移植)について
図4は年齢別の妊娠率を示しています。どの年齢層においても全国平均より高い値であり、またAIHの妊娠率(上記)よりかなり高い値です。しかし40歳より急激に低下しており、治療回数も増えています。高齢化による卵子の数と質が低下することが原因といわれています。40歳代の治療はお金や時間もかかり精神的負担も増します。その割には努力が報われないことも多いのが現実です。現実には35歳からはすべての治療において妊娠率が低下してきますのでARTも視野に入れながら治療をすすめた方が良いと思われます。
トピックス H27年の妊娠より
最高年齢妊娠:45歳 (体外受精・顕微授精)
最高分娩年齢:43歳 (凍結胚移植)
最長不妊期間:14年0月 (凍結胚移植)
胚移植最多回数妊娠:10回目
人工授精妊娠最低精子濃度:0.1×10⁶以下/ml(正常値15×10⁶以上/ml)
人工授精妊娠最低運動率:9%(正常値40%以上)