慢性子宮内膜炎について
慢性子宮内膜炎
子宮内膜炎とは、子宮の内側にある子宮内膜という粘膜が炎症を起こすこと。
細菌感染が主な原因です。感染の状況により、急性子宮内膜炎と慢性子宮内膜炎に分けられます。
子宮内膜の機能層は月経が来るたびに剥がれて体外に排出され、また新しい子宮内膜が作られると
いう事が繰り返される為、炎症が起きることはほとんどありません。
急性子宮内膜炎では月経の時に子宮内膜が剥がれて一緒に細菌も体外へ出て行き、
自然に治る場合があります。
(症状)細菌が侵入し突発的に発症する時には 発熱、下痢、下腹痛、おりもの増加、
不正性器出血など
慢性子宮内膜炎は子宮内膜の深い基底層にまで細菌が侵入し、炎症が起こり、
持続している状態です。月経が起こり子宮内膜が作られるたびに炎症を繰り返すので
自然には治りません。
(症状)ほとんどの人に自覚症状がない、時に不正性器出血や骨盤痛などあるが
症状に乏しいことが特徴、生理不順や無月経、炎症が卵管に及ぶことなどにより
不妊症となることもあります。
子宮内に雑菌が繁殖し、細菌感染が続くと炎症症状が慢性的になり、感染症の為に免疫活動も
活発になり、受精胚を異物として攻撃してしまう可能性が指摘されています。
慢性子宮内膜炎の診断
①子宮鏡検査
子宮腔の中に直径3ミリの細い内視鏡を挿入し子宮の内面を見る
子宮内膜の発赤や浮腫状の肥厚 マイクロポリープの有無
異常な部位があれば組織生検し 形質細胞というリンパ球浸潤があるかで
慢性子宮内膜炎かを診断
②子宮内腔細菌培養検査
感染の原因菌の検出
腸球菌、大腸菌、連鎖球菌、ウレアプラズマ、マイプラズマ、ブドウ球菌など
③組織学的検査
子宮内膜組織を生検し免疫染色という方法により
特異的マーカーの陽性細胞を検出する(自費)
しかし、この3つの検査には全て検出限界があります。診断結果が生検する部位や月経周期により
正確でないことがあったり、培養が難しい細菌もあります。どの検査方法が良いかについては、
まだ一致した見解はありません。当院では①②のいずれかの検査で異常を疑う場合に、慢性子宮内膜炎と診断し、抗生剤内服治療を行っています。③の免疫染色検査も判断に必要な時は行っています。
治療法
検査で原因菌を特定し、その菌に有効な抗生物質を服用することで、治療します。
又、子宮内膜の血管を新しく出したり、増殖したりするのを助ける為、女性ホルモンの
エストロゲン投与をする事もあります。
当院2018年1月~2019年5月までの子宮鏡検査 子宮内腔培養検査のデータ
子宮鏡検査133件中、慢性子宮内膜炎と診断されて方は、45人33.8%でした。
そのうち抗生剤内服治療で15人33.3%の方が妊娠されています。
子宮鏡検査を行い慢性子宮内膜炎の所見なしの方でも、子宮内腔培養検査(16名)を行い、
5名31.2%の方が菌陽性で抗生剤治療を行っています。
子宮鏡検査未実施で、ART治療周期の、良好胚移植しても未妊娠の方に、子宮内腔培養
を行ったところ、42人中21人50%の方が菌陽性で、慢性子宮内膜炎と診断されています。
抗生剤内服治療を行い、そのうち4人の方が現在、妊娠されています。
子宮内腔培養で、菌陰性、良好胚移植しても未妊娠の方に、子宮鏡検査を行い(4人)
子宮ポリープなし、組織検査で免疫染色検査をして、4人中3人に特異的マーカー陽性細胞+で
慢性子宮内膜炎の診断結果でした。これより子宮内腔培養で菌陰性、良好胚移植しても
なかなか妊娠しなければ、組織生検が必要と考えられます。
一般的に慢性子宮内膜炎の罹患率は約0.8~19%一方、不妊患者の罹患率は2.8~39%
さらに、習慣性流産や着床不全の患者は60~68%という報告もあります。このことより、
慢性子宮内膜炎は不妊の原因となることがわかります。生殖補助医療でも、着床障害との
関係が注目されています。
ビタミンDは着床に必要なビタミン
妊活とビタミン効果
卵子の成熟、着床率の向上、習慣性流産リスクの低減、妊娠に有利な免疫力アップ
ビタミンDは一部の食品にしか含まれません。市販のサプリメントを利用しましょう。
栄養素は助け合いながら働いているので、ビタミン・ミネラルなど合わせてバランスよく摂取しましょう。
☆乳酸菌入りの整腸剤も摂取しましょう
子宮内膜の乳酸菌レベルの変化が不妊の一因となっているのがわかってきました。
腸内フローラを整える活動=腸活をしましょう。
“第二の脳”と言われるほど健康と深い関係。腸内環境が乱れると、腸の抵抗力が落ち、
病原性細菌の侵入増殖、免疫力低下などを起こします。善玉菌の乳酸菌は主に小腸に住み
着き炭水化物などの糖を消費して、主に乳酸を作ります。そして腸内に住む細菌のバランスを整えます。腸活すると、子宮内の細菌環境も整い、着床、妊娠率の向上が望めます。